前編のおさらい(炊いた精白米の食物繊維量が増えてしまった話)
我が家にある「新食品成分表FOOD2024(東京法令出版株式会社)」を読んでいたら、炊いた白米の繊維量が玄米より多いことに気づいたことから始まった今回の記事。具体的には下記の数字。
水稲穀粒 玄米3.0g > 精白米0.5g
水稲めし 玄米1.4g < 精白米1.5g←炊いた白米だけ増えた?
(※成分表「こめ」うるち米100gあたりの食物繊維量の箇所を抜粋)
この謎は、水稲めし/精白米には新しい分析方法(AOAC2011.25法)の結果が記載されていた、と判明して一件落着。前編では、
・食物繊維逆転の理由などを下表にまとめ、さらに、
・全ての食品成分表の基礎となる「日本食品標準成分表」について、
・新しい分析法で測定されるようになった成分について、簡単に書いた。
Q:白米と玄米はどちらが食物繊維が多く含まれている? |
A:玄米 |
Q:食品標準成分表2015年版(七訂)で炊いた玄米と白米の食物繊維量を比較すると |
A:玄米1.4g 精白米0.3g(うるち米100g当たり) |
Q:食品標準成分表2020年版(八訂)で炊いた玄米と白米の食物繊維量を比較すると |
A:玄米1.4g 精白米1.5g(うるち米100g当たり)←食物繊維量の逆転現象 |
Q:なぜ、炊いた精白米の食物繊維量が増えたの? |
A:炊いた精白米が、新しい分析法(AOAC2011.25法)で測定されたため |
Q:従来の分析法プロスキー変法とは? |
A:高分子量水溶性、不溶性(難消化性でん粉を含めず)を合計 |
Q:2018年以降、一部の食品に適用された分析法、AOAC2011.25法とは? |
A:高分子量水溶性、低分子量水溶性、全ての不溶性(難消化性でん粉含む)を合計 |
Q:炊いた精白米の食品繊維量が増えてしまったように見える理由は |
A:従来測定できなかった低分子量水溶性と不溶性の一部(難消化性でん粉など)が加算されたため |
Q:新しい分析法(AOAC2011.25法)のメリットは? |
A:食物繊維と類似の働きをする難消化性のオリゴ糖や難消化性でん粉が測定できる |
Q:炊いた精白米(うるち)の他に、AOAC2011.25法で測定されている食品は? |
A:難消化性でん粉を比較的多く含む食品(マカロニ・スパゲティ、じゃがいも、そば類、うどん類、中華麺類、豆腐類など) |
Q:プロスキー変法とAOAC2011.25法の値が書籍内に混在している場合、どうやって見分ける? |
A:備考欄をチェックする(小さな文字でAOAC2011.25と記載されている) |
新しい分析法で注目の難消化性でん粉(レジスタントスターチ)
新しい分析法のメリットは、難消化性オリゴ糖(低分子量水溶性食物繊維の一部)や難消化性でん粉(不溶性食物繊維の一部)が取りこぼし無く測定できるようになったことだろう。
難消化性でん粉(レジスタントスターチ)を簡単に説明すると、小腸で分解・吸収されず大腸まで届くため、食物繊維と似たような働きをするでん粉。これまでは、食事で摂取したでん粉は小腸で消化・吸収されるとされてきたが、難消化性でん粉は大腸まで届き食物繊維と似たような働きをする、ゆえ「体に有用です」ということらしい。
ここ数年「糖質は太る」「糖質=悪」「糖質ダイエット」のような流れで、主食である穀類の摂取量が減少しているそうだ。新しい分析法の採用は穀物離れの傾向を食い止める意図があるのかもしれない。我が家の食品成分表にも【ごはんなどの穀類をしっかりと/穀類を毎食とって、糖質からのエネルギー摂取を適正に保ちましょう/日本の気候・風土に適している米などの穀類を利用しましょう】との記載がある。確かに私の周りでは「穀類」で健康を害するというより「食べ過ぎ」で健康を害しているケースが断然多いような気がする。
参考:お米の食物繊維量を表にまとめてみた
この数字は図書館で借りた「食品成分表2021/女子栄養大学監修」の別表を参考にした。この本には本表と別表があり、本表には食物繊維総量のみ記載され、プロスキー変法とAOAC2011.25法の異なる分析結果が混在している。一方の別表は、総量以外のデータが記載されているのと、プロスキー変法とAOAC2011.25法の結果が区別して記載されている為、データ比較には大変使いやすい。後述するが、この比較は文部科学省の食品成分データベースを利用すると簡単に確認することができる。
表にまとめてみると玄米・発芽玄米の食物繊維の量はとても多いと分かる。私自身は玄米食中心だが、精米器を持っているので料理に合わせて精米している。玄米も白米もどちらも美味しい。
参考:とても便利!文部科学省データベース
文部科学省のウェブサイトには、食品成分データベースの案内がある。誰でも簡単に利用でき、とても使いやすい。この食品成分データベースについて、以下のように説明されているので一部抜粋。利用前にご一読を。
食品成分データベースについて「食品成分データベース」は、日本食品標準成分表に収載されている、エネルギー、たんぱく質(必須アミノ酸等)、脂質(リノール酸、DHA,EPA等)、炭水化物(ぶどう糖、クエン酸等)、ビタミン各種、カルシウム、鉄分、食物繊維、食塩相当量、コレステロールなど食品に含まれる成分の検索や、含有量のランキングの表示などが行え、いつでも、誰でも利用できる便利なサイトです。また、日常の食生活において複数の食材を組み合わせた場合の成分値も表示できます。
食品成分データの利用及び引用について日本食品標準成分表は、科学技術・学術審議会資源調査分科会報告書であり、食品成分データを含め公開しています。そのため、食品成分データは、ご自由に利用して頂けます。また、論文、書籍及びアプリケーション等の二次利用をされたいときは、出典を明らかにするために、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年から引用(又は出典)」とご記載ください。
食品成分データベース(※文部科学省の外部サイトへリンク)
↑今回紹介したデータを確認する場合は、上記データベースの検索ベージから
【食品一覧から検索】を選び→【食品群】穀類を選ぶ→【食品選択】水稲めし→【成分選択】その他→【分析法】プロスキー・AOAC等を指定→【結果を表示】を押すと一覧が表示される。
今回のテーマ「食品成分表の不思議・白米の食物繊維量が増えた」原因については、最初にまとめた通り、新しい検査法により測定できる食物繊維量が増えたからだった。巷に溢れるウェブサイトから穀物や豆類の情報を得る際は「どちらの検査結果が利用されているのか」要チェック!
難消化性でん粉(レジスタントスターチ)についてはポジティブな評価がネット上に飛び交っているけれど、どんな食品も摂取し過ぎると害になるという事実は変わらないので、私はしばらく静観。食品の特定の成分を取り出して「○○は体に良い」という魅力的なフレーズには注意が必要だ。
ここからは、長年の食養生や多くの人を観察してきた経験からの個人的感想。「ポリフェノールは体にいい」「発酵食品が体にいい」「オメガ3は体にいい」など食品の栄養素を知識として学び食事を改善していくことは大切。けれどその前に「よく噛んで唾液と混ぜる」とか「自分の体の処理能力を超える量は食べない」とか、摂取の仕方について考えるのも大切。先ずは食べ方を見直す、排泄も見直す、そして体に取り入れる食品を見直す、こういう感じで。腹八分目医者要らず、かなり回り道したけれど結局ここに行き着いた。2024年9月
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