不正解「❌どうぞ拝見してください」→正解「⭕️どうぞご覧下さい」
先月、20代の女性へのプレゼントを探しに有楽町のSamantha Thavasa(サマンサタバサ)を訪ねた。店内は心ときめく商品で溢れ、店員さんもとても感じが良い。
私「アクセサリーはありますか?」
店「はい、少しでしたらあちらの棚に。ご自由に拝見して下さい。」
私「・・・(拝見?)」
とても丁寧な言葉遣いではあったが、これは誤り。正解は「ご自由にご覧下さい。」だろう。
以前、不動産業界の方に向けて「お客様には拝見じゃなくてご覧下さいですよ」という主旨の記事を書いたが、今回も全く同じ。その時の青年よりさらに若い女性だったので、もう先輩達の敬語も怪しいのかもしれない。またしても指摘してあげられなかったので、彼女は今でも謝った敬語を撒き散らしているに違いない。こういうのは上の世代の責任でもあり、その場に居合わせたのに勇気を持って指摘しなかった私も悪い。
「拝見」について考えよう
拝見の「拝」という感じは、拝む(おがむ)。
「拝む」とはどんな感じでしょう。
・神仏に向かって手を合わせる
・ありがたいもの、恐れ多いと感じるものに手を合わせる
では「拝見」は?「ありがたく見る」「拝むように見る」という感じになる。つまり、客に「拝見して下さい」というのは「我々の商品をありがたく見て下さい」ということになってしまう。
謙譲語(けんじょうご)って何だろう
拝見=謙譲語のグループになる。
謙譲語のイメージは、、
・相手を高める為に自分を下げる感じ
・謙遜(けんそん)する感じ
・恐縮(きょうしゅく)する感じ
正しい説明はぜひ辞書を引いて欲しいが、とりあえず謙譲語は「自分が行う行為」であり「客にさせる行為ではない」ということだけは覚えておこう。
これだけは使いこなそう!よく使う謙譲語たち
・拝読する(読むの謙譲語)→自分が読ませてもらう
・拝聴する(聞くの謙譲語)→自分が聞かせてもらう
・申します(言うの謙譲語)→自分が言わせてもらう
・頂きます(貰う・食べる等の謙譲語)→自分が貰う・自分が何かさせて貰う
・伺います(訪ねる・尋ねる・聞く等の謙譲語)→自分が訪問させてもらう・自分が質問させてもらう・自分が話を聞かせてもらう
以上は基礎。申す、頂く、伺う、には他にも様々な使い方があるので、是非調べて欲しい。
お客様には「ご覧下さい」と言っておこう
ではあの時、Samantha Thavasaの店員さんは何と言えば良かったのだろう。
客「アクセサリーはありますか?」
店「はい、こちらの棚にございますので、ご自由にご覧下さい。」
これでOK。こういうのは癖の問題なので、自然に口から出てくるまで練習しよう。近くの大人から学ぶ機会がなくても、今やYouTubeで素晴らしい先生が無料で教えてくれる。ただし、くれぐれも学ぶ相手を間違えないように(テレビ番組の芸能人司会者は避けておくのが無難だ)。
店員さん必読!お客様に何かして欲しい時は尊敬語を使う
・読んで欲しい→こちらをお読み下さい
・聞いて欲しい→こちらをお聞き下さい
・言って欲しい→遠慮なく仰って(おっしゃって)下さい
・受け取って欲しい→こちらをお受け取り下さい
・訪問して欲しい→是非いらして下さい・是非お越し下さい
・質問して欲しい→お問い合わせ下さい・お尋ね下さい
以上は基本。実は他にも色々な言い回しがある。例えば、要望があれば遠慮なく言って欲しい時、上記のように「仰って下さい」の他に、「お申し付け下さい」も使える。この場合、より畏まった雰囲気になるので、両方使いこなせるとプロフェッショナル感が出る。
まとめ
・「拝見する」は謙譲語なのでお客様に使うことはないと覚えよう。
・お客様に何かを見てもらいたい時は「ご覧下さい」を使おう。
・職場の先輩も間違っていることがあるので、時間があれば簡単な本を読んでみよう。
・YouTubeでプロの言葉遣いを参考に、繰り返し声に出して真似してみよう。

今回はとても若いお嬢さんの話をした。敬語を使いこなすには経験も必要なので間違えて当然だ。頭も心も柔軟なうちに基本を押さえてしまうのがオススメだ。やはり美しい言葉遣いは周囲を和ませたり、その場の空気を浄化する。他人に好印象を与えようとあれこれ見た目を細工するよりも、言葉に少し意識を向ける方が簡単かもしれない。2025年10月
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